技の流れ
けん玉協会の級・段位認定試験におけるルールの原則 (技の解説と注意事項)では、試技の流れとして以下の5つが定義されています。
1 「準備動作」: 試技を開始する前の必要な動作
2 「構え」: 試技を直ちに開始できる状態。一時的に体の動きを静止した体勢
3 「予備動作」: 本動作に連動する補助動作で本動作の一部と見なす
4 「本動作」: 技を成功させるための必須の動作
5 「終了」: 技の成功・失敗を判定した状態公益社団法人日本けん玉協会『級・段位認定試験におけるルールの原則』より引用
http://kendama.or.jp/tricks/basic_tricks/
準備動作は、試技の位置取り、糸の撚(より)を戻す、けん玉の保持などの動作で、構えまでの流れで行われるものなので、構えの一部として考えてよいでしょう。
予備動作は定義通り、本動作の一部です。
よって、技は基本的に、構え、動作、終了の3つの流れで行われることとなります。
終了という名称では失敗も含んでしまうので、完成という名称にしましょう。
構え、動作、完成です。
名称が気になる方は、インプット、処理、アウトプットなど別の名称を付けてもよいでしょう。
重要なのは名称ではなく、基本的に3つの流れで行われる、という点です。
最も分かりやすい技、けんを持って玉を下から引き上げて乗せるという技で見てみましょう。
けんを持って(構え)、玉を真上に引き上げて(動作)、乗せる(完成)。
3つの流れが当てはまります。
技としての決まり
大皿という技を見てみましょう。
先ほどと同様に、級・段位認定試験におけるルールの原則から引用します。
① 大皿
【持ち方】大皿の持ち方
【技の動作】けんを持ち、玉を下につり下げて構える。
けんを動かして玉を鉛直上方に引き上げて、大皿に乗せる
構え、動作、完成に分離して少し文章を補足すると以下となります。
構え:けんを大皿持ちで保持し、玉を皿胴の直下につり下げて静止させる
動作:玉を鉛直上方(真上)に引き上げる
完成:けんの持ち方を維持したまま落下する玉を大皿に乗せる
流れとしての構え、動作、完成の際にどのようなことをする必要があるのか、すべて決められているのです。
この点から見ると、「①大皿」というのは、完成の一部のみの表現なので、まったくルールを知らない人から見たら、誤解を生むような名称です。
だからこそ、ルールの原則という資料が存在しているわけです。
「①大皿」という技名に、構え、動作、完成のそれぞれが分かるように記載すると、次のようになるでしょう。
大皿持ち、玉を鉛直下方に静止~玉を鉛直上方に引き上げ~大皿持ち大皿乗せ
小難しい書き方ではありますが、「①大皿」は大皿に乗ればなんでもよいというものではなく、厳密には、大皿持ちができなかったら、その時点で級位認定試験では失敗です。
理由は、あらかじめ決められた構え、動作、完成と異なるからです。
大皿という場所に玉が乗ることは、「①大皿」となる条件の一つに過ぎないのです。
そんな馬鹿な、と考える方もいるかと思いますので、説明します。
分かりやすい例が中皿でしょう。
大皿持ち、または小皿持ちで中皿に乗せるのが中皿という技です。
ろうそく持ちで中皿に乗せても、中皿という技が成功した、とは言えません。
あくまでも、ろうそくという技が成功した、と表現します。
持ち方だけで、技の名前が変わるのは明らかでしょう。
もう少し補足します。
とめけんを例にしましょう。
けん持ちで玉を下から真上に引き上げて、けん持ちで玉の穴にけん先を入れれば、とめけんですね。
先ほど同様に補足して書くと次のようになります。
けん持ち、玉を鉛直下方に静止~玉を鉛直上方に引き上げ~けん持ち、玉の穴にけん先を入れる
これから、構え、動作、完成を変化させてみましょう。
順番が逆になりますが、分かりやすさを優先して完成から書きます。
- 完成のみを変える
けん持ちで玉を下から真上に引き上げて、けん持ちでうぐいすの部分に乗せれば、うぐいすです。
とめけんとうぐいすは完成が異なるだけです。
ちなみに、うぐいすを言葉で書くと面倒ですが、大皿の縁と玉の穴の縁を接触させ、さらにけん先に接触させる、となるようです。
なお、けん先の接触は必須の条件ではなく、玉がけん先に触れることが可能な位置関係にあることが必須です。
- 動作のみを変える
けん持ちで玉を前に振って一回転させて、けん持ちで玉の穴にけん先を入れれば、ふりけんです。
とめけんと、ふりけんの違いは動作だけです。
- 構えのみを変える
ろうそく持ちで玉を下から真上に引き上げて、けん持ちで玉の穴にけん先を入れれば、ろうそく持ち~とめけんです。
構えの際の持ち方が変わるだけです。※
しかし、名前が変わっています。この技は大会でも使われる立派な技です。
※動作で持ち替えも発生しますが、完成でけん持ちにするために必須の作業であって、玉を引き上げる動作は変わらないために、持ち替えを動作に含んでいません。
注意すべきは、技の難易度ではなく、構え、動作、完成の相違点です。
いずれか一つが変わるだけで技の名前も変わっていることに注目してください。
さて、「①大皿」に戻りましょう。
構え、動作、完成がすべて揃わなければならないものでした。
つまり、「①大皿」という名称が表しているのは、玉を乗せる場所のことではなく、あらかじめ決められた構え、動作、完成すべてを含む技のことなのです。
なぜならば、構え、動作、完成のいずれかが異なれば「①大皿」と異なる技になるからです。
技とは何か
先ほどの「①大皿」の考察で、技とは何か、という点についての重要なヒントが得られました。
構え、動作、完成が揃って技になる。
というものです。
これはつまり、構え、動作、完成は、技の流れであると同時に、技の構成要素でもあるということです。
技の構成要素であるから、そのうちのいずれか一つでも異なる場合に、異なる技になるのです。
これらことから、けん玉の技を、以下のような考え方で見ることができると言えるでしょう。
・構え、動作、完成の3つの要素で構成される
・技の構成要素のうち、少なくとも一つが異なれば、異なる技として認識する
次ページは構成要素を詳しく見ていきます。
このページのまとめ
・技とは構え、動作、完成の3つの要素で構成される
・技の構成要素のうち、少なくとも一つが異なれば、異なる技として認識する