秘訣 1:正しい技を把握する

秘訣 1:正しい技を把握する

最初の秘訣は、いわゆる、ルールを覚えましょう、という事です。
これが無いと始まりません。
とはいえ、ルールブックを熟読する必要はありません。
当面は以下の3点に注意をしてください。

①静止
②修正行為
③胴持ち

この3点は、けん玉協会の技のルールとグローバルけん玉ネットワーク(GLOKEN)の技のルールとが著しく異なる点です。
けん玉協会の技では必須の項目で少し堅苦しいですが、上達を目的とするのであれば、ストリート系の技を中心にしたい方にとっても、そんなに悪くはないルールだと思います。

①静止

ポイント

・全身の動きを止める必要がある
・止める時間は3秒以上が目安
・10秒数えよう

解説

灯台、うぐいす、月面着陸など、玉にけんを乗せたり、皿の縁に玉を乗せたりする技で必要になります。
静止とは、けん玉だけではなく、全身の動きを止めることが必要です。
けん玉を持つ手と関係のない手や足が動いてはいけません。

最も失敗を取られやすいのがこの静止です。
目安は3秒。
完全に全身の動きが止まってから3秒以上の静止が必要です。
しっかり玉にけんが、皿の縁に玉が乗っていないと滑ってしまうので、乗っていることが分かるように全身の動きを止めて3秒以上を目安としています。

連続技の中でも同様に必要になります。
うぐいすの谷渡り、一回転灯台~逆落としなど、途中で玉にけんを、皿の縁に玉を乗せる技が入っている場合は、その技の際に静止をしなければなりません。
連続技の中の静止は1秒以上が目安です。
とはいえ、どれが3秒で、どれが1秒か考えるのはそう意味のある事とは思えませんので、全部3秒以上を目安にしましょう。

静止ができていないと失敗になります。
静止ができていないというのは、全身を止めることができていない場合と、静止時間が足りない場合に分けられます。
自分では止めているつもりでも、けん玉を持つ手と関係のない手が動いている場合は静止時間に含まれません。
全身が止まっても時間が不足すれば静止が不十分と判断されます。

よくある失敗は次のようなケース。
・灯台の後、次の逆落としのためにゆっくりと膝を曲げてしまう、
・うぐいすの谷渡りで小皿に渡した後にすぐにけんに入れてしまう
無意識なのでしょうが、残念ながら失敗です。

さて、3秒を頭で数えて正確に測れるかどうか考えてみてください。
多分無理ですね。

いーち、にーい、さーん と数えるのか、
いち、に、さん、と数えるのかでも全然違います。
認定会や大会では緊張して早く数えてしまいがちです。

3秒だと短くなる可能性が高いので、代表は、止まったと思ってから10秒数えなさい、と伝えています。
どんなに早く数えても10秒を数えるには時間がかかります。
静止時間の不足を避けられる工夫です。

②修正行為

修正行為には、大きく次の二つがあります。
1.つかみ方の修正(つかみ直し)
2.位置関係の修正

1.つかみ方の修正(つかみ直し)

ポイント

・指が動いた時点で失敗
・普段から動かさないで練習する

解説

ストリート系のけん玉を中心にされている方によく見られます。
もちろんストリート系では問題ない行為です。
ストリート系の技は複雑な技が多く、つかみ直しをしなければ成功できない技もあるからです。
しかし、けん玉協会の技ではこのつかみの修正を失敗としています。
注意してください。

玉のつかみ方の修正

分かりやすい玉のかみ方の修正の例から記載します。
はねけんを例にとります。
飛行機を成功させた後、指を動かしてけんの向きを変える行為、これを玉のつかみ方の修正と言います。
指が動いたら失敗です。

けんのつかみ方の修正

ワールウィンド(一回転けんフリップ地球回し)を例にとります。
最初のふりけんの後に、けんを握りなおしてワールウィンドを行う。
これもよく見られます。
残念ながら失敗です。

つかみ方の修正に該当するかしないか

つかみ方の修正というのは、もう一度つかみ直すようなイメージがあって少し軽めの表現です。
実際には指が動いた時点で失敗です。

普段はつかみ直しをしていて、本番だけちゃんとやればいいや、と思っても残念ながら無理でしょう。
つかみ直しが癖になると、例えば、つるしとめけん~地球回し、ふりけん~はねけんなどの技の際にほぼ無意識で行ってしまいます。
特に中級者(二段~四段の方)は、普段から行わないようにした方が良いでしょう。
悪いのはルールではなく、指を動かさなければならないようなやり方にあるのですが、この点は秘訣 8:次の技が何かを考えるで解説します。

2.位置関係の修正

ポイント

・揺らさない
・振らない
・手首をひねらない

解説

位置関係の修正というのは、意図してけん、玉、糸を動かす、またはそれらを動かそうとする行為の事です。
揺らしと手首ひねりが代表的です。
もちろん、けん玉を持っていない方の手で糸を動かすのも修正行為として失敗になります。

揺らし

技が決まった後に、けん玉を前後、左右、あるいは回転させるように、揺らしたり、振ったりするような行為です。

玉、けんの揺らし

飛行機の際に、最後までけん先が穴に入らずに途中で止まった場合。
玉を揺らして最後まで入れたくなりますが、これが揺らしです。
ふりけんの際の玉でも同様です。

はねけんで飛行機が成功した後、玉を揺らしてけんの方向を変える行為、これは掴み直しではないですが、位置関係の修正として失敗になります。

ちなみに、最後までけん先が穴に入らずに途中で止まった場合は、技としては失敗になります。
途中で止まっても失敗、揺らして入れても失敗なら、どうすれば良いのかというと、途中で止まりそうだと気づいた瞬間にしゃがんで、下方への動きの中で最後まで穴に入れることです。
一連の動きの中で解消できれば成功になります。

糸の揺らし

糸外しとも言います。
地球回しやはねけんのような技の時が多いでしょうか。
糸が引っ掛かりそうなときに振ったりして糸を邪魔にならないような場所に移動させることです。
残念ながら失敗です。
息を吹きかけて糸を移動させるのもやっぱり駄目です。

手首ひねり

はねけんで飛行機が成功した後、手首をひねって方向を調整する行為です。
これは1度だけは認められていて、2回以上は失敗になります。
1度だけは良いということで、勢いよくひねってけんが回転するようにするのは、位置関係の修正として失敗になります。
なるべく単純なルールの方が覚えやすいので、手首ひねりは駄目と覚えましょう。

③胴持ち

少しおまけ的に加えました。
空中でけんを持つ動きのある技の場合に問題になるルールです。
例えば、つるしとめけん、円月殺法などです。
空中でけんを持った時に、皿胴に指がかかっていた場合は失敗となります。
厳密にはけん先で玉の穴を受ける際に、皿胴の指を外せば成功の範囲ではありますが、こちらもなるべく単純なルールの方が覚えやすいので、皿胴に指がかかっていた場合は失敗と覚えておきましょう。

秘訣1をルールの順守とした意図

けん玉協会は、ストリート系のけん玉と比べてルールが厳密でうるさいと思われがちです。
確かに、静止技で必要以上に時間を使っていたり、持ち替えをうるさく言われたりする面はあります。

では、ストリート系のけん玉というのは自由なのでしょうか?
一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク(GLOKEN)のけん玉ワールドカップを例にとって少し考えてみましょう。

もちろん、
けん玉協会 = 協会系
GLOKEN(一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク) = ストリート系
という単純なものではありません。
そもそも、協会系、ストリート系という分け方すら疑問がありますが、このあたりは論争を産みそうですし、このコラムの目的はそれをはっきりさせることでもないので、便宜的に、ということで了承ください。

なお、代表はけん玉先生の資格も保有しています。
GLOKENのルールを解説することに問題はないでしょう。

KWC2021の競技ルール【トリックに関する注意事項について】から引用します。
GLOKENのけん玉検定も同様のルールで行います。

KWC2021の競技ルール【トリックに関する注意事項について】
トリック中に、指のポジションを動かすことや、糸を外す動作は、身体の他の部位(もう片方の手など)を使わない限り自由です。
使った場合は「失敗」となりますので、新たにやり直してください。

自由とありますが、その自由は限定されています。
ルールが無いわけではなく、けん玉協会のルールとは違ったルールがあるだけです。
このルールには従う必要があるのです。

もう一つ出しておきましょう。

KWC2019の競技ルール【トリックに関する注意事項について】
インスタ判定については、「けん」と「玉」の接地時間が0.25秒未満の場合をインスタとし、決勝時にはビデオ判定します。
ビデオ判定においては毎秒60フレーム、120フレームのビデオ撮影の場合、それぞれ、接地~離れるまでが15フレーム、30フレーム以内とすることを判定基準とします。
それぞれ、16~20フレーム、31~40フレームまでの場合に限り、故意にスロー調整していないと判断し「準インスタ」として通常得点の50%(小数点切捨て)を得点とします。

インスタとは、灯台や月面などのけんを玉に乗せて静止させる技の静止時間を極端に短くして次の技に繋げる事です。
さか落としの灯台の時間が短いバージョンをイメージすると分かりやすいでしょうか。

さて、インスタのルールはどうですか?

厳密ですね。
ルールが厳しいはずのけん玉協会でも、このルールほど厳密に定義されているものはありません。

なぜこんなに厳密なのでしょうか?
そして、なぜルールがあるのでしょうか?

上達の度合いを試す認定、検定を行うにしても、競技として行うにしても、一定のルールがなければ成り立たないからです。

自由に遊ぶのであれば、ルール度外視でも、マイルールでも構いませんが、優劣や成否を何らかの基準で計る必要がある以上はルールは無視できません。
協会系であろうと、ストリート系であろうと、ルールを知らなければ始まらないのです。

ましてや、このコラムを見ている方は、今よりも上達したい方のはずです。
ルールを正しく覚え、実践しましょう。

ルールに則ることで、技の失敗とみなされることが減ります。
これだけで成功率は上がるという事ですが、他にも以下のようなメリットがあります。
・けんや玉をコントロールする能力が上がる
・クセを取り除くことができる

変にクセを付けたまま練習してしまうと、効率が悪いだけでなく、後からクセを抜くことが難しくなります。
できるだけ早い段階から実施してください。
まずは本コラムに記載した3点を意識してみてください。